日本語で「養蜂家」
英語で「Beekeeper」
同じ意味なのですが、
「養う」より「keep」
のほうが好きなので
Beekeeper
にしています。
Beekeeperの仕事は一年間を通じて
蜜源植物や環境の変化、そしてミツバチの状態の変化を
正しく判断し、ハチミツを採取しながら
ミツバチの命を繋ぐことです。
もっとも重要な「内検」
内検とは巣箱のなかのミツバチの営みを観察(検査)することです。内部検査の略です。 内検のポイントは、一般的には 「女王蜂の有無」 「貯蜜、花粉、産卵、雄蜂児の状態」 「ミツバチの密度」 「王台の有無」 「ミツバチの健康状態」などです。 内検は越冬期を除いて1年を通して必要です。内検の結果、状態に応じて適切な処置をします。 少なくとも週1回。1,2日置きに内検が必要な時もあります。 時期によってミツバチの営みが違うため、内検のポイントや対処の仕方も変わってきます。巣箱の周囲の観察も大切です。
Beekeeperのある1日
- 【内検】
- 巣箱のなかの蜂の様子や巣脾の状態を観察し、的確な処置を施す作業です。巣箱ごとに状態や作業内容をノートに書き記します。
- 【移動】
- 蜂を置いている場所間を車で移動すること。
- 【明日の準備】
- 巣箱や巣脾、内検などに必要な道具類を準備し、車に積み込むことです。
- 【全体把握】
- ノートを見て全ての巣箱の状態を把握し、短中期的にどう対処するか 考えることです。たえず上書きされます。
- 【学習】
- 情報を得たり、考えたり、想像したり、妄想したりすることです。
【ミツバチ・蜜源植物・環境】の1年と
【Beekeeper】の1年。
ミツバチ・蜜源植物・環境
Beekeeper
12December
越冬
ミツバチたちは体温が下がらないように巣箱のなかで球体の塊となって越冬する。 球の中心と表面のミツバチは順送りで入れ替わると言われている。
越冬準備
巣門を狭くし、巣箱の空間に断熱材を入れ、室内上部は新聞紙で覆うなど室内温度の確保につとめる。
1January
ミツバチはきれい好き
気温の高い日は働きバチは脱糞飛行にでかける。巣箱のなかで寿命が尽きたミツバチも出される。 1月後半から梅の花が咲き始める。
冬の晴間の脱糞飛行
貯蜜量の確認
極端に軽い巣箱は貯蜜不足なので暖かい日を選んでハチミツを暖めて与える。
2February
産卵開始
2月になると産卵を開始する。足に花粉を付けたミツバチも見かけるようになる。ミツバチたちの一年のはじまりである。
気温上昇で巣門を開ける。
ミツバチは喜びを全身で表現。
給餌開始
産卵が始まると貯蜜の量に注意する。特に貯蜜の少ない群はどんどん与える。
3March
建勢期
3月に入ると気温も上がり、産卵も活発になる。 一方、育児をしているミツバチは越冬した老齢のミツバチばかり。最後の命を振り絞って妹たちに食べ物を与えている。 若いミツバチも次々に誕生。
蓋をしているのは蛹。
働きバチは卵から21日で成虫になる。
給餌
産卵が盛んになると育児のために餌(ハチミツと砂糖水)と花粉が大量に使われる。 餌と花粉を切らすと産卵を中止するばかりか全滅する可能性もある。
巣脾追加
ミツバチの勢力が拡大すると空巣脾(産卵、貯蜜ができるスペースが十分ある巣脾)を追加していく。
写真上方に給餌器、ミツバチが群がっているのは花粉
4April
待望の桜
4月になると桜が盛んに咲いてくる。 ソメイヨシノ、早咲きの山桜、遅咲きの山桜、山里は桜の花粉と花蜜で満ちている。老齢バチは消え、若バチが命を受け継ぐ。働きバチも加速度的に増える兆し。
山桜は多くの野生桜があり開花時期は長い
継箱設置
巣箱がいっぱいになるとその上に継箱を乗せる。継箱には下の箱から蓋をした蛹でいっぱいの巣脾を2~3枚と空巣脾1~2枚入れる。下の箱には空巣脾を設置。 継箱は貯蜜ゾーン、下の巣箱は産卵育児ゾーンとなる。隔王板を挟み女王バチは上へは上がれないようになっている。
写真には隔王板はない
ミツバチ・蜜源植物・環境
Beekeeper
5May
蜂急増/百花繚乱・流蜜期
5月に入るとミツバチは爆発的に増え、王台を多数作る。ここから生まれたミツバチが新しい女王バチとなる。 また蜜を吹く花々が次から次へと咲き乱れ、蜜を求めて昆虫が花に群がる。ミツバチの集蜜活動もいよいよ盛んに。 アカシア、エゴノキ、ウツギ、カキ、ソヨゴ、・・・晴天が続くと大量の蜜を集める。
ピーナツのような形の王台。卵から16日で女王バチが誕生
自然分封
新女王が生まれる前に、今まで産卵していたお母さん(旧女王)は、半数の娘達(働きバチ)の先導で巣箱を後にし、新女王に明け渡す。
一旦、蜂球になって営巣場所を探す
新女王の交尾
新女王は生まれて1週間で発情し、交尾飛行に出る。その後1週間で10匹前後の雄バチと空中で交尾すると言われている。 雄バチの唯一の仕事である。
転飼
山桜の流蜜が終わると巣箱を次の場所へ移動する。ミツバチの出勤前の薄暗い中での作業である。
人工分封
王台(新女王の蛹がいる)を含む巣脾3枚くらいに蜂をいっぱいくっ付けて小さい巣箱に独立させる。この独立群を越冬期まで成長させ来年の主力にする。 4月末から5月末までに行う。
人工分封群の巣箱。すでに新女王も産卵を始めている。
採蜜
上の継箱にいっぱいのハチミツが貯まる。 ハチミツの貯まった巣脾を取り出し、遠心分離機でハチミツを取り出す。 空いた空間には下の箱から蓋をした蛹でいっぱいの巣脾を移動したり空巣脾を設置したり、次の採蜜に備える。 継箱の上に更に継箱を置き、3段にすることもある。 4月末から6月末まで、4回行う。
遠心分離機でハチミツを取り出しているところ
6June
栗の花の流蜜
待望の栗の花の開花。梅雨の時期に重なるため天候が採蜜量に大きく影響する。生産者の高齢化に伴う深刻な問題も。
能勢の栗林
半盛巣脾作り
来年用の巣脾をミツバチに作ってもらう。この半盛巣脾が来春威力を発揮する。
女王バチの更新
この時期までには採蜜群の女王バチは生まれた新しい女王バチに更新しておく。歳をとった女王バチは産卵力が弱まる。
7July
蜜源植物ほとんど無し/酷暑
流蜜する植物はほとんどない。ネズミモチなどの蜜や花粉で育児や自分たちの食料がやっとまかなえる状態。 酷暑でミツバチたちもグロッキー。
リョウブの花の流蜜
数年に1度、リョウブが大流蜜をする。
暑さ対策
巣箱を簾などで覆い、直射日光を避ける。
転飼
陽の出は早い。5時30分には現場に到着。巣門を閉じて速やかに次の烏山椒の現場に巣箱を移す。
ミツバチ・蜜源植物・環境
Beekeeper
8August
烏山椒の花の流蜜
烏山椒は幹や枝にはトゲがあり、花は横に直線状に連続して咲く。葉がアゲハチョウの食料となり産卵場所として知られている。
獣も近づけない
採蜜
一年最後の烏山椒の花の蜜を絞る。 ミツバチも体力消耗でなかなか糖度があがらない。烏山椒は難しいハチミツだ。
9September
ハチ数・蜜源とも徐々に減少
これから冬に掛け、産卵は弱まり、蜜源は減少。ミツバチの勢力は衰退の一途。
オオスズメバチの大攻撃
8月末から11月の初めまで食料を求めて、オオスズメバチの働きバチと女王バチが攻撃に来る。総攻撃に遭うと1時間で巣箱ごと占拠されほぼ全滅。
キイロスズメバチとのバトルの結果
猛産卵させ勢力維持を保つ
食料不足の群れには、給餌や花粉を補給する。8月の採蜜後のミツバチの勢力を維持拡大に努めるのが越冬のポイント。
オオスズメバチ対策
オオスズメバチの習性を利用しネズミ捕りシートに導く。
1枚のシートに20~30匹のオオスズメバチ、年間100枚以上使用
10October
ミツバチヘギイタダニの繁殖
8月あたりから女王バチの産卵力が徐々に弱まりミツバチが減少する結果、巣箱のなかで生存しているミツバチヘギイタダニは相対的に増加する。 放っておくと見る見るうちにミツバチが減少し、やがて全滅する。越冬前までに駆除することが大切だか非常に難しい。
ミツバチヘギイタダニの兆候
転飼・万全な内検・適切な処置
10月初め全ての巣箱を1箇所に集め、巣箱の状態をきめ細やかに観察。 越冬までの2ヶ月、オオスズメバチやミツバチヘギイタダニに対して最適の対応をはかる。
花粉とミツバチヘギイタダニ対策
11November
秋も深まり、ミツバチの活動弱い
気候も厳しくなるにつれミツバチは産卵力が弱まり、巣の中で過ごす時間が多くなる。
ミツバチを混ます
越冬前までに巣脾を巣箱から抜きミツバチの密度を高め、充分な貯蜜を与えておく。巣箱に6~9枚の巣脾にミツバチがびっしり付いている状態だと来春は気持ちよくスタートが切れる。